こんにちは!カンガルー師匠です。
今回はUSCPA(米国公認会計士)試験の概要や例題、筆者の経験を交えながらUSCPA合格に必要な英語力について解説します。
「USCPA 英語力」などのキーワードでググると、「USCPA合格に英語力はそれほど必要ない」「中学レベルの読解力があればOK」「TOEIC 600点くらいでも合格を狙える」といった解説が出てきましたが、私は全部ウソだと思います。「英語力無くてもOK」系の記事は、最終的に広告をクリックさせるための不誠実な記事だと断言します。
英語の試験として大したことの無いTOEICですらまともに点を取れない英語力でも、大学で会計を勉強したアメリカ人が受ける専門的な試験の英語は問題にならないとは、どういうことでしょうか?正直、メチャクチャ英語が出来る私でもUSCPA合格は普通に大変でした。
ということで、前置きが長くなりましたが本題に入りましょう。
USCPAの勉強が出来る、問題が解ける、試験に合格することは全部別の話
まず、USCPAの勉強が出来ること、問題が解けること、試験に合格することは全部別の話であることを理解しましょう。
英語力が低くても「USCPAの勉強」は出来ます。そりゃ、予備校が素晴らしい日本語のテキストを用意してくれて、講義も日本語で丁寧にやってくれますから。英語力が低くても、講義の内容を聞いてじっくり取り組めば問題演習だって正解することは出来ます。
しかし、試験に合格するためには相当なレベルまで問題演習を仕上げる必要があります。USCPA試験の問題構成は下記表の通りで、非常にボリュームが多くて試験時間が4時間というタフな試験です。
MC | ・4択問題 ・科目ごとに問題数が異なるが、最少のBECで62問、最多のREGで76問出題される ・得点配分は50% |
TBS | ・経理実務に即したケース設定で、ほとんどの場合何枚かの資料を見ながら回答する応用問題 ・計算した数値を打ち込む、あるいは選択式といった回答の仕方 ・FAR, AUD, REGでは8問、BECでは4問出題される ・FAR, AUD, REGでは得点配分は50%、BECでは35% |
WC | ・BECで扱うテーマについてビジネスシーンを想定した短いドキュメントを書く英作文問題 ・BECでのみ3問出題され、得点配分は15% |
当たり前のことですがUSCPA試験は、大学で会計を専攻したアメリカ人向けの、彼らでも落ちることがある、専門的職業の資格試験です。そんな試験において、1問あたり80秒程度でMCを60~70問ほど解き続け、応用問題や英作文7~8問を2時間ちょっと解き続け、4時間の試験の末に一定の正答率を叩き出した日本人は英語出来るキャラに決まってるでしょ。また、仮に簿記1級に受かった外国人がいたとすれば、会計知識の凄さもさることながら、「コイツ日本語力もヤベえ」と思うはずです。
TOEICが出来なくてUSCPA試験が出来る訳ない
「TOEIC 600点の私がUSCPAに合格しました」みたいな記事もありましたが、そんな人たちもUSCPA試験に受かった時にはTOEICの点も800点後半くらいまで上がっています。TOEIC 600点台のままUSCPA試験に合格出来る人はいません。なぜなら、TOEICもUSCPAも事務処理力が問われる試験で、USCPAの方が中身が難しいのですから、TOEICのスコアがショボい、すなわち英語での事務処理力が低い人はUSCPA試験で点が取れないのです。
TOEICはビジネスシーンを想定した事務処理力を問われるような英語の試験ですよね。例えば、会議のアポがテーマで、最初に伝えた時間は10時開始だったが午後に変更になったなどの情報が与えられ、それらを整理して選択肢を選ぶというイメージです。
USCPA試験のTBS問題も、TOEICのように実務を想定した問題です。例えばメール固定資産台帳を模した資料が与えられ、減価償却の耐用年数を4年としたが正しくは5年で修正が必要といった情報を整理し、計算をして回答します。
TOEICが出来ないのにUSCPAが出来るはずがありません。上記の通りUSCPAは専門的で4時間のタフな試験ですが、2時間(readingに限れば75分)の簡単なTOEICで900点(正確にはreadingで9割)くらい取れる読解力、速読力、英語のスタミナが無いと厳しいと思います。逆に、USCPAに合格した後にTOEICを受けたらスコアが大躍進していたというのも納得できると思います。
USCPA試験に難解な英語は出ないという嘘
「USCPA試験は、大学受験のような難解な英語は出ないから、最低限の読解力があれば大丈夫」という人もいます。確かにUSCPAは英語力そのものを問うことを意図した試験ではありませんが、アメリカ人の大人が受けるビジネスシーンを意識した専門的試験の英語が簡単というのは暴論でしょう。
USCPA試験において最も英語として難しいのは、監査理論が中心で計算が少ないAUDと言われています。AICPAのサンプル問題を一問見てみましょう。
Which of the following characteristics most likely would heighten an auditor’s concern about the risk of material misstatements arising from fraudulent financial reporting?
A) The entity’s industry is experiencing declining customer demand.
B) Employees who handle cash receipts are not bonded.
C) Bank reconciliations usually include in-transit deposits.
D) Equipment is often sold at a loss before being fully depreciated.
普通にカッチリした英語で難しいと思いますけどね。もちろん、MCではもっと簡単で短い問題も出ますが、少なくともTOEICよりは文法、単語、熟語の知識が必要だと思います。
そして上記の通り、勉強できることと受かることは別ですので、USCPA試験の問題が読めるというレベルであっても、文法や単語がわからずに曖昧な読解となった故に落とす問題を潰し切れていないようだと合格は厳しくなります。
メチャクチャ英語が出来る筆者でも大変だった
自分で言うのもアレですが、私は英語の読み書きはメチャクチャ出来る方です。英語に関するスペックはこんな感じ。
- TOEIC 980点
- TOEFL 99点(USCPA 2科目合格時に受験)
- 洋書を複数冊読んだ経験あり
- 大学の塾講師バイト時代、MARCHレベルの英語なら初見で満点取れてた
- 英語の論文を読んだり、英語でレポートを書いた経験あり
- 仕事で英語の読み書きは日常的に行っていた
ただ、これでも勉強を始めた頃はMCを解くのに時間がかかっていましたし、試験本番では毎回時間カツカツで必死で、時間が足りずに諦めたTBSもありました。
USCPA受験において、私は専門用語を覚えること以外“英語”という観点での試験対策は不要でしたが、それでも試験が“英語”であることは大変に感じました。普通の日本人である以上、試験が英語であることは間違いなく大きなハードルです。「もし試験が日本語だったら合格できるくらいの会計の理解度はあるのに」というレベル感で落ちた日本人は大勢いるはず。リスニングもスピーキングも出ないからという理由で、USCPA試験の英語を軽く見るのは誤りです。
英語力が無い人はUSCPAを受けてはダメなのか
ここまで、英語力が高い人でなくてもUSCPAには合格できるという意見を否定してきました。では、結局英語力が無い人はUSCPAを受けてもムダ死にするだけで、受けない方がいいのでしょうか?また、USCPAより先に英語を勉強した方が良いのでしょうか?筆者の意見としては、英語力が低いとUSCPA合格までに時間がかかって合格確率も低いということを理解した上で、予行演習期間を設けてからチャレンジせよです。
英語力が低い人は時間がかかるし合格確率が低い
USCPAの学習を始める時点で英語力が低い人は、①最初のうちは問題演習に時間がかかる、②文法を確認したり専門用語以外の単語を覚える手間が増える、という2点によりUSCPA学習に時間がかかります。USCPA合格までに必要な学習時間については、下記の記事を参考にしてください。
合格確率という面では、当然ですが試験を受ける際に十分な英語力までレベルアップしていなければ不利になります。また、一科目目に何度か落ちて諦める、英語が難解なAUDや英作文があるBECでどうしても合格できずに撤退に追い込まれるということも考えられます。USCPAでは合格から18カ月経過した科目は失効(Expire)するため、1科目受かった日から18カ月以内に残りの3科目に合格する必要がありますが、なかなか合格出来ずに足を引っ張る科目があるとExpireのリスクが高くなります。
USCPA学習を始める前に2,3カ月の予行演習をせよ
英語力が不安でUSCPAを始めようか迷っている人に対して、個人的には「お前の覚悟次第。変えたい未来があるなら死ぬ気でやれよ」と思っています。しかし、これでは精神論に過ぎないので、合理的なメソッドを教えましょう。それは、USCPA学習を始める前に2,3カ月の予行演習期間を設けて、TOEIC 800点程度まで英語力を伸ばしてみることです。
この方法には、英語力を鍛えるという直接的なメリットに加えて、学習習慣の定着と期間を決めてKPIを達成する成功体験を積むという意図もあります。これまで述べてきた通り、英語力が低いとUSCPAに合格する確率は低いですし、学習にも時間がかかります。そこに対してモチベーションが保てるのか、本当に合格出来るのかという不安があって勉強開始することを躊躇しているのであれば、英語力を高めつつ試験で結果を出すという成功体験を積めばいいのです。勝算が高まってから本格始動しましょう。ちなみに、会計に自信が無いという人についても、合わせて簿記2級の学習も行うことをお勧めします。
TOEICで800点を取れと言いましたが、実際は自分で模試に取り組んでリーディングのスコアアップだけを確認すれば十分です。USCPAにはリスニングは不要ですし、コロナ禍の昨今においてはTOEIC試験を受けるのも一苦労ですからね。
USCPA合格までの学習時間については、こちらの記事で述べた通り、週に20時間の勉強を1年以上継続する必要があります。勉強が続けられなくて撤退する人が非常に多いので、週に20時間勉強をすることがどの程度の負荷なのか先に把握し、習慣をつけておくことも重要です。
まとめ
以上、長くなりましたが最後にまとめです。
- 英語力が低くてもUSCPAの「勉強」は出来るが、「合格」することは別の話
- 「TOEIC 600点の私でもUSCPA合格しました」という話の裏には、実は合格時には800点以上までスコアが伸びているというカラクリがある。低スコアのまま受かった訳ではない
- 簡単な事務処理力を問う2時間のTOEICが出来ないのに、専門的な内容で事務処理力を問う4時間のUSCPAに合格できるはずがない
- 英語力が低い人は、USCPA学習に時間がかかり、合格確率も低い
- 英語力に不安を感じてUSCPAを躊躇している人は、英語力向上の成功体験獲得と学習習慣の定着化をするための予行期間を作ってみよう
USCPAの学習を検討している方は、下記の記事も参考にしてください。
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