USCPAと簿記1級を徹底比較!どっちかを受けるならUSCPAがおすすめ

USCPA

こんにちは!カンガルー師匠です。

今回はUSCPAと簿記1級を比較してみました。経理で自己研鑽を頑張るとなると、まず簿記2級は皆さん取得すると思いますが、その先の選択肢として迷うのがUSCPAと簿記1級だと思います。

筆者の見解としては、簿記1級とUSCPAでどっちかを受けるならUSCPA、両方受けるつもりの人でも先にUSCPA受験をおすすめします。その理由は、USCPAの方が広く浅く学べること、キャリアの幅が広がること、名刺に書けたり海外で通用したりと肩書としての威力が強いことにあります。簿記1級は経理を極めたい職人気質な人向けの資格だと思います。

USCPA vs 簿記1級 5つの項目で比較

USCPAと簿記1級の比較表を作りました。

表を見た感じだと、USCPAの方が金も時間もかかって大変そうですね。ここから5項目に集約し、詳しく解説していきます。

①資格・試験の制度概要

表の書きぶりからもわかる通り、USCPAの方が試験制度として複雑であり、それを理解して受験手続を進めるのが面倒です。ここではUSCPAの特徴的な点を説明します。

USCPAは学歴要件や受験手続きが面倒

USCPAは全米50州の中から、出願する州を選んで受験します。州によって、受験に必要な学歴や大学における取得単位の要件が異なり、実質的に日本人が出願できる州は限られています。ただ、受ける試験の問題はどこの州で出願しても同じです。

本記事では詳細を説明しませんが、受験するまでに大学から卒業証明書を取り寄せてアメリカに送ったり、大学で取得した単位が要件を満たしているか確認する作業が必要です。予備校に入れば出願州の選択サポートや受験手続のガイダンスはバッチリやってくれますので手続きに失敗することは無いですが、かなり面倒な作業です。この点、簿記1級は日本の試験ですし、受験要件もなくネットでサクッと申し込んでしまえば完了です。

USCPA/米国公認会計士 国際資格 アビタス

USCPAは東京か大阪で4回受験しなくてはならない

USCPAはアメリカの試験であるものの、東京と大阪のテストセンターで受験可能です。後述するようにUSCPAでは4科目に合格する必要があるため、少なくとも4回東京か大阪で試験を受ける必要があり、首都圏か京阪神以外に在住の人にとっては受験だけで一苦労となります。

試験の実施頻度という点では、USCPAは一部の州を除いて通年で受験可能であり、自分で都合のいい日を予約して受けることが出来ます。一方、簿記1級は年に2回実施となっています。

USCPAはライセンスを取得すれば名刺に「米国公認会計士」と書ける

実はUSCPAの試験に受かることと、「米国公認会計士」になることは別です。試験に受かった後、ライセンス申請をして追加試験や実務経験の審査(これらも州によって条件が異なる)をパスすると、ライセンスが与えられるのですが、これをもって米国公認会計士と名乗れます。試験に受かっただけの人(全科目合格者とでも呼びましょうか)は名刺や経歴に「米国公認会計士」と書いてはいけません。

米国公認会計士と名乗れれば、日本はもちろん世界のどの国に行っても会計の専門家であるという対外的なアピール効果があります。日本人駐在員はUSCPAを持つことでビザが取りやすくなったり、ジョブ型雇用が主流でメンバー全員CPAということも珍しくない海外経理部門で、ローカル社員と対等な立場に立つことができます。ただし、転職や社内評価においては全科目合格者であれば基本的にライセンス保持者と差がつくことはありません

②試験の出題範囲・合格要件

4科目の同時合格が必要なUSCPAと一発勝負の簿記1級

USCPAでは4科目を受験し、最初の科目に受かってから18カ月以内に残りの3科目に合格すれば全科目合格者となります。4科目揃わないと受験から18カ月経過した科目は失効(Expire)してしまい、再受験が必要となります。合格点は各科目で75点となっています。

一方で、簿記1級は一回の試験で合否が決まります。合格点は70点ですが、後述する4つの分野全てで40%以上の得点を取る必要があります(40%に満たない分野があるとその時点で不合格となります)。

出題範囲が会計以外の領域まで広がるUSCPAと会計を極める簿記1級

USCPAの4科目の出題範囲は下記の通りです。

見てわかる通り、USCPAのうちFARとBECの一部のみがいわゆる簿記と重なる領域で、出題範囲はその他の分野まで広がっていることがわかります。いずれも分野も、そこまで難しいことを聞いてくる訳ではなく、個々の問題の難易度としては簿記1.5級くらいというイメージが妥当かと思います。なお、アメリカの試験と言っているためご承知でしょうが、USCPAの試験は全て英語です。

簿記一級の出題範囲は、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算となっていますが、毎回過去問で対応しきれないような難しい問題が出題され、分野としては4つであるものの、広く深い知識が問われます。

③試験の難易度・学習時間・独学

USCPAと簿記一級では難易度の性質が違う

ちょっと古いデータですが、日本人のUSCPA各科目の合格率は約30%です。ただし、USCPA一定期間内に4科目に合格する必要がありますから、試験単体の難易度だけでは測れない難しさがあります。どうしても特定の科目(特にAUDとBEC)が受からずに何度も落ちるという人もいますし、一科目受かった後は「ちょっとプライベート優先して半年勉強を休止」とはいかないのが難しいところです。予備校が合格率50%のように宣伝していることもありますが、勉強を始めた人のうち4科目合格までたどり着いた人というのは10~20%と言われています。

簿記一級については、各回の合格率に変動はあるものの、おおむね10%という数字です。ただし、こちらも数字だけでは見えてこない事実があります。簿記一級と学習範囲が被っていることから、税理士試験や公認会計士試験を受ける人が沢山受けています。実際、私も知人で公認会計士が何名もいますが、ほとんど簿記一級(さらに税理士試験の簿記論と財務諸表論)を持っています。よって、簿記一級は税理士や公認会計士の受験生を含んだ上での合格率10%ということを忘れてはいけません。

USCPAの方が勉強時間は長いが、学習期間は同じくらい

簿記2級を持っている人が合格までに必要な学習時間として、USCPAは1,000時間、簿記一級は700時間が目安です。USCPAの勉強時間については、こちらの記事に詳しく書いたのでご参照ください。1,000時間でUSCPA合格に至るとすると、USCPA学習だけにトコトン集中できる人で1年、普通の人の場合は1年半程度の学習期間となります。

簿記一級については、試験が半年に一回しかないので、合格までに必要な学習時間自体はUSCPAより少なくても、合格に至るまでの期間は1年~2年程度かかる可能性が高いです。勉強を始めて半年後の一回目の試験で合格出来ればいいのですが、合格率が10%ですので、多くの人は何度か落ちることを覚悟しておくべきでしょう。落ちる度にもう半年ずつかかってしまいますから、2度目、3度目のチャレンジで受かる想定で、合格までに1年~1年半かかることとなります。

USCPAは独学が難しい

こちらの記事で詳しく書いていますが、USCPAは受験手続が面倒なこと、試験直前対策の教材が入手できないことなどから、予備校を使わずに独学で合格することはかなり厳しいです。

簿記一級も難しい試験なので予備校を使った方が楽だとは思いますが、煩雑な手続きは無いですし、市販の教材もUSCPAより遥かに充実しているので、独学で合格することも可能です。

USCPA/米国公認会計士 国際資格 アビタス

④受験費用・予備校費用

受験費用・予備校費用ともに圧倒的にUSCPAの方が高いです。USCPAの費用の詳細については下記の記事をご確認ください。

受験費用

USCPAは4科目受ける必要がありますが、為替レートの影響があるものの、日本で受ける場合だいたい一科目あたり7万円かかります。また、最初の学歴審査で数万円かかりますので、合わせて最低でも30万円というラインからのスタートです。そして一科目落ちるごとに追加で7万円です。

一方、簿記一級は一回当たりの受験料が7,850円(2020年8月時点)ですので、約1/10ですね。文字通りケタが違います

予備校費用

まずUSCPAの講座そのものでも簿記一級の講座より高いです。さらに、上記のUSCPA費用の記事にも書きましたが、USCPAの受験要件である取得単位が曲者です。単位が足りていない人は、予備校で講座を受ける以外に単位取得のための試験を受ける必要があり、それが予備校代を引き上げることとなります。

⑤キャリアアップ

広く浅く×英語×肩書のUSCPA

キャリアアップという観点では、広い領域をカバーし、英語力の証明にもなり、肩書として効果を発揮するUSCPAに軍配が上がると考えます。USCPAは扱う領域が広いため、経理関係はもちろん、財務や経営企画への転職にも役立ちます。英語力のアピール効果は当然として、ビザがおりやすくなる可能性から海外駐在への道も開けます。また、名刺に書ける肩書であることから、監査法人や会計コンサルタントの求人ではJCPAまたはUSCPA必須となっていることがあり、そういったハードルをパスできるようになります。

一方で、簿記一級は経理を極めた人といえるほど実務力の証明になり、どの会社の経理でも会計知識という面では戦えるでしょう。ただし、上記のようなUSCPAにある多様なメリットはありません。オールラウンダーのUSCPAと専門家の簿記一級というイメージです。

結論

以下が本記事で伝えたかったことのサマリーになります。

  • USCPAの方が受験までの手続きが面倒
  • USCPAには、ライセンスを取得することにより名刺や経歴に「米国公認会計士」と記載できる肩書としてのメリットがある
  • USCPAの出題範囲はとても広くやや浅く、簿記一級は広くとても深く
  • 一定期間に4科目に受かる必要のあるUSCPAと、メチャクチャ難しい一発勝負の簿記一級では難易度の性質が全く違う
  • 学習時間はUSCPA 1,000時間に対して簿記一級700時間だが、合格までの期間は同じくらい
  • 合格までに要する費用は圧倒的にUSCPAの方が高い
  • キャリアアップの面では、広く浅く×英語×肩書のUSCPAに軍配が上がる

私の意見としては、多くの人にとってUSCPAの方がメリットが大きいと思います。ですので、シンプルにどっちがいいかと聞かれたら、USCPAをおすすめします。広く浅く英語も同時に鍛えられて、キャリアの幅も広がり対外的な肩書も手に入るからです。逆に言うと、今の仕事でガリガリ難しい仕訳や会計処理を考えていて、今の仕事を続けるつもりであり、英語は重視せずにとにかく会計知識を鍛えたいという人であれば簿記一級がおすすめです。

それではこの辺で失礼します。

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