平均年収1,800万円のキーエンスのヤバさと激務薄給ブラック企業の考察

企業分析

こんにちは!カンガルー師匠です。

今回は久しぶりに業界研究シリーズです。キーエンスという平均年収1,800万円超を誇り、会計の数値もイカれている企業をご存知でしょうか?「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」という激務高給を一言で表したキャッチコピーがぴったり当てはまる会社ですが、このぶっ飛んだキーエンスの数値やビジネスモデルを見ることで、ブラック企業の性質がよく理解できるのです。今回は第一部でキーエンスを会計数値から考察し、第二部でブラック企業の真実と、実はキーエンスはブラック企業の正反対を行くという話をします。

ここが変だよキーエンス

これから紹介する数字は全部イカれていますが、嘘ではありません。嘘だと思うならキーエンスのホームページに行って確かめてください(笑)。

平均年収1,839万円

2020年3月期の有価証券報告書によると、平均年齢35.6歳で平均年間給与が1,839万円とあります。2019年3月期では2,111万円であり、東洋経済の年収ランキングでは2位につけております。

1年で300万円近く変動したのは業績に連動するボーナスの比重が高いためと考えられますが、それでも依然として高給で有名な総合商社やテレビ局に圧勝する水準です。ただ、外資系投資銀行のように20代のうちから何千万も稼げる訳ではないという点は注意が必要です。

早速「キーエンス 転職」とか「キーエンス 合コン」でググりたくなった方が多いと思いますが、最後までこの記事を読んでからにしてください(笑)。

10年で売上2.5倍!それでも営業利益率50%はキープ

キーエンスのWebサイトにある業績ハイライトのページには下記のグラフが1枚ペタッと貼ってあります。

「これでウチの凄さはわかるやろ」という強いメッセージを感じます。会計がちょっとわかる人なら「は?嘘つくなや」と感じるでしょう。それが普通の反応です。でも本当の話なんです。

営業利益とは、売上から原価と販管費を引いた数値で、本業の儲けを表します。普通の企業で平均は8%くらい、10%あれば優秀な方です。営業利益が50%ということは、100円で売ったら50円が利益になる訳ですが、自分の会社やバイト先で会計を知っているとこの数値を思い出してみてください。利益率50%というのは訳が分からないレベルだと実感できたはず。

そしてさらに凄いのが、10年で売上を2.5倍にしながらもこの水準を維持していることです。あの前澤社長で有名なZOZOもかつてはバグってる高収益企業でしたが、拡大とともに収益力は下がりましたからね。売上が2,000億から5,000億に増えても収益力を維持しているのは驚異的です。

なぜキーエンスは高収益なのか

キーエンスはセンサーや計測機器を作っている会社です。工場の生産工程を自動化するFA(ファクトリーオートメーション)という分野で欠かせない製品を扱っており、「世界初・業界初」にこだわって徹底したソリューション提案を行う会社です。

キーエンスは顧客との間に代理店を挟まず、営業が直接顧客から引き出したニーズに対し、開発と一体になってソリューションを提案するシステムが完成しています。FAの分野は、モノを売ったら終わりではなく、顧客の要望は尽きることがありません。なぜなら、顧客であるメーカーにとって生産プロセスは生命線であり、日々課題解決や改善に取り組んでいますからね。キーエンスは、どんな会社でも作れるような平凡な製品を扱うのではなく、他社と差別化が測れる領域にこだわり、そこで勝ち続けている訳です。

金満無借金B/S

キーエンスの2020年1Q末時点でのB/Sをグラフ化しました。

見ての通り、借金が無く分厚い流動資産、純資産を誇ります。流動資産のうち現金は約4,600億円、有価証券は5,500億円となります。また、固定資産が6,000億円ほどありますが、そのうち5,900億円が投資有価証券であり、いわゆる工場などの固定資産はほとんど持っていません

キーエンスは自社工場を持たないファブレス経営ですが、投資先は人です。上述のハイレベルなコンサル型営業を行うため、社員には営業マニュアルによるロールプレイングや勉強会といった教育を徹底的に行います。また、圧倒的な給料を与えつつ階級とそれに応じた時間チャージを設定し、「〇ランクのお前には1時間あたりこれだけコストがかかってるんだから、それ以上の利益を出せよ」と発破をかけて管理しています。営業は外回りの時間を分単位で記録して報告しないといけないそうですが、製造工程を合理化するソリューションと同じノリで自社の社員も管理しているのでしょう(笑)。

とまあ、平均年収2,000万円ほどを社員に払って人で勝負している訳ですが、工場と在庫をたくさん抱える資本集約型の産業より投資負担は軽く、借金による資金調達は不要です。さらに高収益のため現金もガバガバ入ってくるため、B/Sの状態を端的に表現するならば「儲かって金が余ってどうしようもない」となります。そんな会社が実在しちゃうんですね、、

激務薄給ブラック企業の考察

さて、ここから第二部としてブラック企業の考察です。

ブラック企業に陥るビジネスモデル

筆者が思うブラック企業になってしまうビジネスモデルの特徴は下記の3つです。

ブラック企業三原則
①コモディティを売っている
②ブランドがない
③採用、育成が弱い

まず、コモディティ、すなわち誰でも作れる商品や誰でも真似できるサービスを売っていると価格を下げることでしか勝負できないので、価格競争に陥ります。そんなものは買い手側もどこでも安く似たようなものが売られていることをよく知っていますからね。もしブランドが確立していれば、「高いけど絶対に最新i Phoneを持ちたい」という風に消費者から選ばれるため、価格競争に陥らなくてすみます。コモディティを扱う商売は誰でも容易に真似ができるため、優秀な社員を採用して育成する必要はありません。一方、ブランドを確立するには社員の高いパフォーマンスが必要ですから、採用と育成の強さは①②から自ずと決まってきます。

キーエンスはブラック企業の正反対

上記のブラック企業三原則をキーエンスに当てはめてみると、見事に正反対であることがわかります。すなわち、キーエンスは①顧客のニーズを汲み取ってソリューション提案するのでコモディティの対極であり、②世界初・業界初にこだわってきたブランドがあり、③社員を徹底的に教育しているからです。綺麗にブラック企業の逆を行っていますね。

キーエンスは働く側としてはどうなの?

外からマクロな視点で見るとキーエンスはブラック企業の正反対だった訳ですが、働く側の視点で見ると激務なことは事実です。十分な給料があるためブラックという訳では無いですけどね。キーエンスはマッキンゼーやボスコンのような外資系戦略コンサルに近いと思えば、ビジネスとして儲かるものの働く側としては決してホワイトではないということがよくわかるでしょう。

では、キーエンスのような高収益で社員に高給を出す余裕があり、仕事自体はまったりなホワイトな企業とはどんな会社でしょうか。それは、上記のブラック企業三原則を回避しつつ、資本に働いてもらう会社です。キーエンスは固定資産を持たず、人で勝負する会社でした。大量の人を必要とする小売りや飲食のような労働集約型ではないものの、知能集約とでもいいましょうか。結局人が働かなくちゃいけない訳ですからね。

その点、資本集約型、すなわち機械やモノが働く会社の社員はまったりできます。具体的には、圧倒的な利便性とブランドの東海道新幹線を誇るJR東海、丸の内の大家さんといわれる三菱地所といった企業です。戦コンのような人材輩出企業ではないものの、毎年トップクラスの新卒を採用してきっちり教育してますので、③の採用育成もカバーできています。

最後に

キーエンスの凄さとブラック企業の秘密、ホワイト企業の見極め方はいかがでしたでしょうか。会計の数字を見ながらビジネスモデルを考察すると良い会社かどうかよくわかります。一方で、働く側として見るべき点は異なるということも重要です。その辺の分析方法を今回の記事を通じて理解してもらえれば幸いです。

それではこの辺で失礼します。

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